「営業資料を作っても受注につながらない」「商談は盛り上がるのに最終的に失注してしまう」そんな悩みを抱えていませんか。実は、受注率が低い営業資料には共通した問題点があり、その多くが構成の設計ミスによるものです。
本記事では、受注率を3倍に引き上げる営業資料の構成テンプレートを完全解説します。BtoB営業で実績のある15スライド構成をベースに、各ページの作り方から業種別カスタマイズ、デザインテクニックまで網羅的に解説します。
記事の後半では、すぐに使えるパワーポイント形式のテンプレートとチェックリストも無料でダウンロードできます。営業資料を改善して受注率を上げたい方は、ぜひ最後までお読みください。
よくある営業資料の3大失敗パターン
受注率が低い営業資料には、3つの典型的な失敗パターンが存在します。これらのパターンに当てはまる資料は、どれだけ商談で熱心に説明しても成約につながりにくいのが現実です。
会社紹介から始まる「自分語り」型資料は、最も多い失敗パターンです。表紙の次に会社概要や沿革、理念などを延々と説明する資料は、顧客にとって「自分には関係ない情報」であり、読み進める意欲を削いでしまいます。顧客が知りたいのは「自社の課題がどう解決されるか」であって、提案企業の歴史ではありません。
機能羅列だけの「カタログ」型資料も典型的な失敗例です。サービスや製品の機能を箇条書きで並べただけの資料は、顧客にとってのメリットが不明確です。「この機能があります」ではなく「この機能により御社の〇〇という課題が解決できます」という価値提示が必要です。
次のアクションが不明確な「丸投げ」型資料は、最後のページで「ご検討ください」と結ぶだけで終わってしまいます。顧客は「次に何をすればいいのか」がわからず、検討が進まないまま失注するケースが多発します。
これら3つの失敗パターンに共通するのは、「顧客視点の欠如」です。自社が伝えたいことではなく、顧客が知りたいことを中心に構成することが受注率向上の第一歩となります。
受注率が高い営業資料の共通点
受注率が30%以上の高い営業資料には、明確な共通点があります。その最大の特徴は「顧客の意思決定プロセスに沿った構成」になっていることです。
顧客が製品やサービスを導入する際、「課題認識→解決策の探索→比較検討→導入決定」というプロセスをたどります。受注率が高い営業資料は、この思考の流れに沿って情報を配置しているため、顧客がストレスなく読み進められます。具体的には「御社にはこんな課題があります→その原因はこれです→当社のサービスで解決できます→その根拠はこちらです」という論理的な展開です。
課題→解決→根拠の論理的な流れも重要な共通点です。顧客は「なぜそのサービスが必要なのか」という理由から理解したいと考えます。いきなりサービス説明から入るのではなく、まず課題を提示し、その解決策としてサービスを位置づけることで、顧客の納得感が高まります。さらに、導入事例や数値データで根拠を示すことで、信頼性が向上します。
社内稟議を通しやすい情報設計も見逃せないポイントです。BtoB営業では、商談相手と決裁者が異なるケースがほとんどです。商談担当者が社内で稟議を通す際に必要な情報(ROI、導入ステップ、競合比較、リスク対策など)が網羅されていれば、決裁者への説得がスムーズになり、受注確率が大きく向上します。
【比較表】受注率10%未満 vs 30%以上の資料構成の違い
受注率が低い資料と高い資料では、構成要素と情報の配置に明確な違いがあります。以下の比較表で、両者の差を確認しましょう。
| 項目 | 受注率10%未満の資料 | 受注率30%以上の資料 |
|---|---|---|
| 冒頭の構成 | 会社概要・沿革から開始 | 顧客の課題提示とサマリーから開始 |
| サービス説明 | 機能の羅列のみ | 課題とセットで価値を説明 |
| 数値データ | 「導入実績多数」など抽象的 | 具体的な数値とROIシミュレーション |
| 導入事例 | ロゴ並べのみ | 類似企業のビフォーアフター明示 |
| 価格提示 | 料金表だけ掲載 | 費用対効果とセットで提示 |
| リスク対応 | 記載なし | FAQ・競合比較・サポート体制を明示 |
| 導入フロー | 記載なしor簡素 | キックオフ〜運用定着まで詳細化 |
| クロージング | 「ご検討ください」で終了 | 次のアクション・期限を具体的に明示 |
| ページ構成 | 論理的な順序がバラバラ | 意思決定プロセスに沿った配置 |
| 社内稟議対応 | 商談向けの情報のみ | 決裁者向け情報も網羅 |
この比較から分かるように、受注率が高い資料は「顧客が意思決定するために必要な情報」をすべて盛り込んでいます。一方、受注率が低い資料は「企業側が伝えたい情報」だけを並べている傾向があります。
特に重要なのが、社内稟議を意識した情報設計です。商談担当者が「この資料があれば上司を説得できる」と感じられる構成になっているかどうかが、最終的な受注率を大きく左右します。既存の営業資料がある場合は、この比較表と照らし合わせて改善ポイントを洗い出してみてください。
基本構成の全体像
受注率を最大化する営業資料の基本構成は、全15ページで構成されます。この構成は、顧客の意思決定プロセスである「課題認識→解決策探索→比較検討→導入決定」という流れに完全に沿った設計になっています。
構成の全体フローは次の通りです。1-2ページ目で顧客の興味を引きつけ、3-4ページ目で課題に共感し、5-7ページ目で解決策を提示します。8-9ページ目で信頼を獲得し、10-14ページ目で意思決定に必要な具体情報を提供し、最後の15ページ目で行動を促します。
各セクションの役割を明確に理解することが重要です。表紙とサマリーは「つかみ」、課題提起は「共感」、解決策提示は「興味喚起」、効果・事例は「信頼獲得」、価格・導入ステップは「決断の後押し」、クロージングは「行動促進」という役割を担っています。
配置の理論的根拠は、心理学のAIDMA(注意・興味・欲求・記憶・行動)モデルと、BtoB購買における意思決定理論に基づいています。人は「自分ごと化→共感→納得→信頼→決断」というプロセスで購買を決定するため、この順序で情報を配置することで、顧客の心理的抵抗を最小化しながら購買へ導くことができます。
この15ページ構成は、初回提案から社内稟議まで幅広く対応できる「マスター版」です。商談のフェーズに応じて簡略版や詳細版にカスタマイズすることで、あらゆるシーンで活用できます。
【即DL可】パワーポイント構成テンプレート
営業資料の構成テンプレートを、各スライドの見出し例と記載内容とともに紹介します。このテンプレートをそのまま活用することで、受注率の高い営業資料を短時間で作成できます。
15スライドの見出しと記載内容の一覧
- 表紙:「[業種]の[課題]を解決する[サービス名]のご提案」+ 提案先企業名・日付
- サマリー:「本提案の要点」+ 課題・解決策・期待効果を各1文で
- お客様の現状と課題:「[業界]でよくあるこんな課題はありませんか?」+ 3-4つの具体的課題
- 課題の背景・原因:「なぜこの課題が発生するのか」+ 環境要因・構造的問題の分析
- 解決コンセプト:「[サービス名]が実現する理想の状態」+ Before/After図解
- サービス概要:「[サービス名]とは」+ 3行説明とデモ画像
- 主要機能と特徴:「3つの主要機能」+ 各機能が解決する課題との対応
- 導入効果・ROI:「導入による効果シミュレーション」+ 工数削減・コスト削減の試算
- 導入事例:「[類似企業名]様の成功事例」+ 課題・施策・成果の3点セット
- 価格・プラン:「料金プランと費用対効果」+ 各プランの特徴と投資回収期間
- 導入ステップ:「導入から運用定着までの流れ」+ 時系列ロードマップ
- FAQ:「よくあるご質問」+ 不安・疑問への回答5-7項目
- 競合比較:「他選択肢との違い」+ 機能・価格・サポート体制の比較表
- サポート体制・会社概要:「導入後の支援体制」+ 実績・体制図・企業情報
- 次のアクション:「ご提案の次ステップ」+ 具体的な行動と期限
業種別カスタマイズのポイントも押さえましょう。SaaS・システム系は無料トライアルの導線を強調し、コンサルティング系は実績とメソッドを前面に出し、製造業・物販系はスペック表と納期・品質保証を詳細化します。顧客の業種や購買プロセスに合わせて、このテンプレートの各要素を調整することで、より高い受注率を実現できます。
フェーズ別の最適構成パターン
営業資料は、商談のフェーズによって最適な構成が異なります。すべてのシーンで15ページのフル版を使うのではなく、フェーズに応じて簡略版や詳細版を使い分けることで、より効果的なプレゼンテーションが可能になります。
初回提案用(簡易版10スライド)は、まだ関係性が浅い初回商談で使用します。構成は「表紙→サマリー→課題提起→解決コンセプト→サービス概要→主要機能→導入効果→事例(簡易)→次のアクション→会社概要」の10ページです。この段階では詳細な価格や競合比較よりも、「興味を持ってもらう」「課題に共感してもらう」ことが目的です。情報過多を避け、シンプルで分かりやすい内容に絞り込みます。
比較検討用(詳細版20スライド)は、複数社を比較検討している段階で使用します。基本の15ページに加えて「詳細機能説明(2-3ページ)」「複数の導入事例(2-3ページ)」「セキュリティ・技術仕様」「詳細な料金シミュレーション」「導入リスクと対策」を追加します。この段階では、顧客が意思決定するために必要なすべての情報を網羅的に提供することが重要です。競合との差別化ポイントを明確に示し、選ばれる理由を論理的に説明します。
稟議用(決裁者向け5スライド)は、現場担当者が社内で稟議を通す際に使用します。構成は「サマリー→効果・ROI→導入事例→価格・投資回収→導入ステップ」の5ページです。決裁者は詳細な機能説明よりも「投資対効果」「リスク」「実績」を重視するため、これらの情報に特化したコンパクトな資料が効果的です。
商談の進捗に応じてこれら3パターンを使い分けることで、各フェーズで最大の効果を発揮できます。
表紙・サマリー(1-2枚目)
表紙とサマリーは、営業資料全体の第一印象を決定づける最重要ページです。この2ページで顧客の興味を引けなければ、その後のページを真剣に読んでもらえません。
顧客が3秒で「自分ごと化」する表紙の作り方が成功の鍵です。表紙には、単なる会社名やサービス名だけでなく、「誰の」「どんな課題を」「どう解決するのか」を一文で示します。例えば「製造業の生産管理部門向け|在庫コストを30%削減する在庫最適化システムのご提案」のように、ターゲットと価値を明示することで、顧客は「これは自分に関係がある資料だ」と瞬時に判断できます。
結論ファーストのサマリー設計法では、2ページ目に今回の提案の要点をすべて凝縮します。「御社の課題」「当社の提案内容」「導入による効果」の3点を、それぞれ1-2文で簡潔にまとめます。決裁者がこのページだけを読んでも、提案の全体像が理解できるレベルの情報密度が理想です。箇条書きを使い、視覚的に瞬時に把握できるレイアウトにします。
業種別の表紙・サマリーテンプレート例を活用しましょう。SaaS系なら「[業務名]の効率化を実現」、コンサル系なら「[経営課題]の解決支援」、製造業なら「[具体的な数値目標]を達成する」といった表現が効果的です。顧客の業種や課題に合わせて、響く言葉を選ぶことが重要です。
表紙とサマリーで心をつかめば、顧客は前のめりで資料を読み進めてくれます。この2ページに最も時間をかけて磨き上げましょう。
課題提起・背景整理(3-4枚目)
課題提起と背景整理のページは、顧客との信頼関係を構築する最重要パートです。ここで「この会社は自社の状況を理解している」と感じてもらえれば、その後の提案がスムーズに受け入れられます。
ヒアリング内容の効果的な反映方法が成功の鍵です。事前のヒアリングで得た情報を、そのまま資料に反映させます。例えば「御社では現在、〇〇システムを使用されていますが、△△という課題があるとお聞きしました」のように、具体的な固有名詞や状況を盛り込むことで、顧客は「この資料は自社のために作られた」と感じ、関心が高まります。
「御社のような企業では」で始める課題定義も効果的なテクニックです。個別企業の状況だけでなく、「同業他社でもよく見られる課題」として一般化することで、課題の普遍性と深刻さを伝えられます。「[業種]の[部署]では、[状況]により[課題]が発生しやすい傾向があります」という構造で書くと、顧客は「そうそう、まさにそれ!」と共感します。
顧客が「そうそう!」と共感する書き方のポイントは、表面的な課題だけでなく、その奥にある「本当の困りごと」まで掘り下げることです。例えば「在庫管理が煩雑」という表面的課題の奥には「在庫切れによる販売機会損失」「過剰在庫による資金繰り悪化」「担当者の長時間労働」という本質的な困りごとがあります。この本質まで言語化できれば、顧客は「この会社は分かってくれている」と強く感じます。
課題提起で共感を得られれば、その後の解決策提示が自然に受け入れられ、受注率が飛躍的に向上します。
解決コンセプト・サービス概要(5-7枚目)
解決コンセプトとサービス概要のページでは、顧客の課題に対する解決策を提示します。ここでの説明の仕方が、受注率を大きく左右します。
機能説明ではなく「状態ベース」の価値提示が重要です。「当社のシステムには〇〇機能があります」という機能説明ではなく、「当社のシステムにより、御社の△△業務が自動化され、□□時間の工数削減が実現します」という状態ベースの説明をします。顧客が知りたいのは「何ができるか」ではなく「どんな良い状態になるか」です。機能は手段であり、実現される状態こそが本当の価値です。
Before/Afterを可視化する図解テクニックを活用しましょう。現状(Before)と導入後(After)を左右に並べた図解は、視覚的に変化を理解しやすく、効果が一目瞭然です。例えば、作業フローの図解で「手作業10ステップ→自動化で3ステップ」のように示すと、改善の度合いが直感的に伝わります。数値データ(時間、コスト、人数など)も併記すると説得力が増します。
競合との差別化を明確にする書き方も見逃せません。「業界初」「唯一」「最速」などの差別化ポイントがあれば明記します。技術的な差異ではなく、それが顧客にとって「なぜ重要なのか」「どんなメリットがあるのか」まで説明することで、競合との違いが明確になります。
解決コンセプトのページで「このサービスなら課題が解決できそうだ」と感じてもらえれば、商談は成功に大きく近づきます。機能羅列ではなく、価値提示を徹底しましょう。
効果・ROI(8枚目)【最重要】
効果・ROIのページは、営業資料の中で最も受注率に影響する重要なページです。BtoB購買では、決裁者が最も重視するのが「投資対効果」であり、このページの出来が契約の成否を分けると言っても過言ではありません。
数値シミュレーションの作成手順を解説します。まず、顧客の現状の数値データ(工数、コスト、売上など)をヒアリングで把握します。次に、サービス導入によってどの数値がどれだけ改善するかを試算します。例えば「現在の月間作業時間100時間→導入後30時間(70%削減)」「削減工数の人件費換算:月額35万円の削減」のように具体的に示します。
工数削減・コスト削減の計算式と見せ方では、計算プロセスを透明化することが重要です。「月間作業時間100時間×平均時給3,500円×12ヶ月=年間420万円の人件費削減」のように、計算式を明示すると信頼性が高まります。グラフや表を使って視覚化し、導入前後の差を一目で理解できるようにします。
「投資回収期間」を明示する効果は絶大です。決裁者は「初期投資とランニングコストを何ヶ月で回収できるか」を知りたがります。「導入費用100万円+月額費用10万円」に対して「月間35万円の削減効果」なら「約3ヶ月で投資回収」と明示することで、決裁者は投資判断がしやすくなります。
ROIが明確に示されていれば、価格が高くても「投資価値がある」と判断され、受注につながります。このページに最も力を入れましょう。
導入事例・実績(9枚目)
導入事例のページは、サービスの効果を証明し、顧客の不安を解消する信頼獲得のパートです。事例の見せ方次第で、受注率は大きく変わります。
ロゴ羅列ではなく「ストーリー」で見せることが重要です。「導入実績500社」とロゴを並べるだけでは、顧客の心には響きません。効果的なのは、1-2社の事例を深掘りし、「どんな課題があり」「どう導入し」「どんな成果が出たか」をストーリー仕立てで説明することです。顧客は自社の状況と重ね合わせながら読むため、ストーリー形式の方が「自分たちも同じ成果が得られそうだ」と実感できます。
類似企業の成功事例の選び方では、提案先企業と「業種」「企業規模」「課題の種類」が類似した事例を選ぶことが鉄則です。例えば、従業員100名の製造業に提案するなら、従業員80-150名規模の製造業の事例を掲載します。顧客は「自社と似た企業で成功している」という事実に最も説得力を感じるため、類似性の高い事例を選ぶことが受注率向上の鍵です。
定量データと定性コメントの配分では、数値データと顧客の声をバランスよく掲載します。「業務時間60%削減」「コスト年間500万円削減」などの定量データで効果を証明し、「導入後は残業がほぼなくなり、社員の満足度が向上しました」という顧客の声で、数値だけでは伝わらない価値を補足します。
説得力のある事例提示で、「このサービスなら確実に成果が出る」という確信を顧客に持ってもらいましょう。
価格・プラン(10枚目)
価格・プランのページは、顧客が最も気にするページの一つです。価格提示の仕方を間違えると、どれだけ良い提案でも「高い」と思われて失注してしまいます。
価格提示と費用対効果をセットで見せることが鉄則です。価格だけを単独で提示すると、顧客は「高い・安い」という判断しかできません。しかし、前ページのROIと連動させて「月額10万円の投資で月間35万円の効果」のように提示すれば、顧客は「費用対効果が高い」と判断できます。価格は常に「得られる価値」とセットで説明しましょう。
「高い」と思わせない価格説明の技術では、いくつかのテクニックがあります。年額ではなく月額で示す、競合との比較で相対的な妥当性を示す、オプション費用を含めた総額ではなく基本プランから提示する、などです。また、「1日あたり約3,000円」のように日割り換算すると、心理的なハードルが下がります。
オプション・プランの整理方法では、3段階のプラン設定が効果的です。基本プラン(最低限の機能)、標準プラン(推奨)、プレミアムプラン(フル機能)の3つを提示し、標準プランを「最も選ばれています」と推奨します。選択肢が多すぎると決断が遅れるため、3つ程度に絞り込みましょう。
各プランの機能差だけでなく、「どんな企業におすすめか」も明記すると、顧客は自社に最適なプランを選びやすくなります。価格提示を「高い」から「妥当」へ転換させることが、このページの目的です。
導入ステップ・体制(11-14枚目)
導入ステップと体制のページは、顧客の「本当にうまくいくのか?」という不安を解消し、導入後のイメージを具体化するパートです。このページが丁寧に作られていると、受注率が大きく向上します。
キックオフ~運用定着までのロードマップでは、時系列で導入の全工程を可視化します。「1週目:キックオフMTG・要件定義」「2-4週目:初期設定・データ移行」「5-6週目:テスト運用」「7週目:本番稼働」「8週目以降:運用定着支援」のように、週単位または月単位で具体的なスケジュールを示します。工程ごとに「誰が何をするか」も明記すると、顧客は準備すべきことが分かり安心します。
「不安ゼロ」の導入フロー設計では、顧客が感じやすい不安を先回りして解消します。「既存システムからのデータ移行はどうするのか?」「トラブル時のサポートは?」「既存業務を止めずに導入できるのか?」といった典型的な不安に対して、「専任SEが移行を全面サポート」「24時間365日のサポート体制」「並行稼働期間を設けてリスクを最小化」のように、具体的な対策を明示します。
FAQ・競合比較・サポート体制の書き方では、11-14ページを使って詳細に説明します。FAQは「よくある質問5-7項目」を掲載し、不安を解消します。競合比較は「機能・価格・サポート」の3軸で表形式にまとめ、自社の優位性を明示します。サポート体制は「専任担当者の配置」「サポートチームの体制図」「導入実績」を示して信頼を獲得します。
この4ページで「この会社なら安心して任せられる」と感じてもらえれば、受注は目前です。
クロージング・次のアクション(15枚目)
クロージングページは、営業資料の最終ページであり、顧客を具体的な行動へと導く重要なページです。ここでの誘導が弱いと、せっかくの良い提案も検討が止まってしまいます。
「ご検討ください」で終わらせないことが鉄則です。多くの営業資料が「以上、ご検討のほどよろしくお願いいたします」という曖昧な終わり方をしていますが、これでは顧客は「次に何をすればいいのか」が分かりません。明確なアクションを提示することで、商談を前に進めることができます。
具体的な次ステップと期限の提示方法では、3つの要素を明示します。(1)次に何をするか「無料トライアル」「デモ実施」「詳細ヒアリング」など、(2)いつまでに「今月末まで」「2週間以内」のように期限を区切る、(3)誰が何をするか「弊社:デモ環境準備」「御社:参加者の調整」のように役割分担を示す。この3点が明確だと、顧客は迷わず次のステップに進めます。
アクションを促すCTA設計では、心理的ハードルを下げる工夫が効果的です。いきなり「契約」ではなく、「まずは無料トライアルで効果を確認してください」のように、小さな一歩を促します。また、「今月末までのお申込みで初期費用50%OFF」のような期限付きオファーを加えると、検討スピードが上がります。
最後のページで行動を明確に促すことで、商談が停滞せず、受注へとスムーズに進みます。クロージングページにも手を抜かず、丁寧に設計しましょう。
誰に(ターゲット定義)
営業資料を作成する前に、最も重要なのが「誰に向けた資料なのか」を明確に定義することです。ターゲットが曖昧なまま作成すると、誰にも刺さらない資料になってしまいます。
業種・企業規模・担当部署の明確化では、具体的にペルソナを設定します。「製造業、従業員100-500名、生産管理部門の課長クラス」のように、業種・規模・部署・役職まで詳細に設定します。ターゲットが明確になるほど、その人たちが抱える課題や求める情報が絞り込まれ、刺さる資料が作れます。
決裁者 vs 現場担当者の視点の違いを理解することも重要です。現場担当者は「業務がどれだけ楽になるか」「使いやすさ」を重視する一方、決裁者は「投資対効果」「リスク」「会社全体への影響」を重視します。商談相手が現場担当者でも、最終的な意思決定は決裁者が行うため、両方の視点を満たす情報を盛り込む必要があります。
例えば、現場担当者向けには「操作が直感的で研修不要」という情報を、決裁者向けには「年間500万円のコスト削減」という情報を、同じ資料内に配置します。ターゲットの階層によって重視する情報が異なるため、「誰が読むか」を多層的に想定することが、受注率の高い資料を作る第一歩です。
ターゲット定義を曖昧にせず、具体的な人物像まで設定してから資料作成に取り掛かりましょう。
何を決めてもらうか(ゴール設定)
営業資料を作る際、「この資料で何を決めてもらいたいのか」というゴール設定が曖昧だと、焦点がぼやけた資料になってしまいます。明確なゴール設定が、効果的な営業資料の大前提です。
体験版申込 / PoC / 一次導入の違いを理解しましょう。「体験版申込」がゴールなら、ハードルを下げて「まず試してみる」ことのメリットを強調します。「PoC(概念実証)」がゴールなら、本格導入前の効果検証というステップを明示し、リスクを最小化できることを訴求します。「一次導入」がゴールなら、ROIと導入ステップを詳細に示し、決断を後押しします。同じサービスでも、ゴールによって強調すべき情報が全く異なります。
フェーズに応じたゴール設計では、商談の進捗状況に合わせてゴールを段階的に設定します。初回商談では「次回のデモ実施を約束してもらう」、2回目の商談では「トライアル開始を決めてもらう」、3回目では「本格導入を決めてもらう」のように、段階的なゴールを設定します。いきなり契約を迫るのではなく、小さなコミットメントを積み重ねる方が、最終的な受注率は高まります。
ゴールが明確になれば、「そのゴールを達成するために必要な情報は何か」が自ずと見えてきます。資料の構成や強調すべきポイントも自然と定まります。まずは「この資料で何を決めてもらうのか」を言語化してから、資料作成に着手しましょう。
どの場面で使うか(利用シーン)
営業資料は、使用するシーンによって最適な構成や情報量が大きく異なります。利用シーンを明確にしないまま作ると、「情報が足りない」または「情報過多で分かりにくい」資料になってしまいます。
初回提案・比較検討・稟議それぞれの最適化では、各シーンの特性を理解することが重要です。初回提案では、まだ関係性が浅いため、簡潔で分かりやすく、興味を引く内容が求められます。10-12ページ程度に絞り、課題提起と解決コンセプトを中心に構成します。
比較検討段階では、顧客は複数社を詳細に比較しているため、競合との差別化ポイント、詳細な機能説明、複数の事例、セキュリティや技術仕様など、あらゆる角度からの情報が必要です。15-20ページの詳細版を用意し、顧客の疑問をすべて解消できる内容にします。
稟議段階では、商談担当者が社内の決裁者に説明するための資料が必要です。決裁者は細かい機能よりも「投資対効果」「リスク」「実績」を重視するため、5-7ページの簡潔版で、ROI・導入事例・価格・導入ステップに絞り込みます。「この資料があれば上司を説得できる」と感じてもらえる構成が理想です。
同じ内容でも、利用シーンに応じて「何を・どこまで・どの順番で」説明するかを変えることで、各場面での効果が最大化されます。資料作成前に「どの場面で誰が読むのか」を具体的にイメージしましょう。
SaaS・システム導入系
SaaS・システム導入系の営業資料では、「使いやすさ」「セキュリティ」「導入の容易さ」が重要な訴求ポイントになります。基本テンプレートをこれらの要素を強調する形にカスタマイズしましょう。
無料トライアル導線の組み込み方では、クロージングページだけでなく、資料の随所にトライアルへの誘導を配置します。表紙の次のサマリーページに「まずは30日間の無料トライアルで効果を実感してください」と明記し、導入ステップのページでも「トライアル→本格導入」の流れを図解します。また、「トライアル期間中のサポート体制」や「トライアル後の本格導入への移行手順」も詳しく説明することで、顧客の心理的ハードルを下げます。
セキュリティ・導入障壁の不安払拭では、専用ページを設けるのが効果的です。「セキュリティ対策」のページで、データの暗号化、アクセス制限、バックアップ体制、ISO認証などを明記します。「導入の容易さ」については、「既存システムとの連携方法」「データ移行の手順」「ダウンタイムゼロでの導入事例」などを具体的に示します。
また、SaaS特有の「サブスクリプション型」の価格モデルも丁寧に説明します。初期費用が抑えられること、月額課金で予算が立てやすいこと、解約の自由度が高いことなどを明示し、「まず小さく始めて、効果を見ながら拡大できる」というメリットを訴求しましょう。
コンサルティング・BPO系
コンサルティング・BPO系の営業資料では、「人的リソースの質」と「実績・メソッド」が最大の差別化ポイントです。基本テンプレートを、これらを前面に押し出す構成にカスタマイズします。
実績とメソッドの見せ方では、単なる導入実績の羅列ではなく、「どんなメソッドで」「どんな成果を出したか」をストーリーで示します。例えば、「当社独自の〇〇メソッド」というフレームワークを図解し、「このメソッドにより[業界]の[課題]を解決してきました」と説明します。また、業界別・課題別の成功事例を複数掲載し、「幅広い課題に対応できる」という印象を与えます。メソッドのページを2-3ページ使って詳細に説明することで、専門性と信頼性が大きく向上します。
人的リソースの信頼獲得方法では、「誰が担当するのか」を明確に示すことが重要です。コンサルタントやBPOスタッフの経歴・実績を紹介する「チーム紹介」のページを設け、保有資格、過去のプロジェクト実績、業界経験年数などを明記します。顔写真と簡単なプロフィールを掲載すると、親近感と信頼感が増します。
また、「プロジェクト体制図」で、「誰が」「どんな役割で」関わるかを可視化し、「専任チームが手厚くサポートする」という安心感を与えましょう。コンサルティング・BPOでは「サービス」ではなく「人」が商品なので、人的リソースの質を最大限にアピールすることが受注の鍵です。
製造業・物販系
製造業・物販系の営業資料では、「スペック」と「信頼性」が購買の決め手になります。技術的な詳細情報と、納期・品質保証の両方を網羅した構成にカスタマイズします。
スペック表と価値提案の両立では、詳細なスペック情報を掲載しつつ、それが顧客にとって「なぜ重要なのか」まで説明します。例えば、「耐荷重500kg」というスペックだけでなく、「これにより御社の[用途]でも安心してご使用いただけます」と価値に変換します。スペック表は別ページに詳細版を用意し、本編では「主要スペックと顧客メリット」に絞り込んで説明することで、技術的な正確性と分かりやすさを両立できます。
納期・在庫・品質保証の記載も見逃せません。「標準納期2週間」「在庫常備品は即日出荷可能」「保証期間3年、無償修理対応」など、顧客が気にする実務的な情報を明確に示します。製造業では「すぐに必要」というケースも多いため、在庫状況や納期短縮オプションの有無を記載することで、競合との差別化になります。
また、「品質管理体制」「ISO認証」「検査工程」なども掲載し、品質への信頼を獲得します。製造業・物販では「カタログ的な情報」と「提案書的な価値訴求」の両方が必要なため、基本の15ページに「詳細スペック資料」を別添する形で対応すると効果的です。技術者が見ても納得し、経営層が見ても投資判断ができる、二層構造の資料設計がポイントです。
1スライド1メッセージの原則
営業資料のデザインで最も重要な原則が「1スライド1メッセージ」です。この原則を守るだけで、資料の分かりやすさが劇的に向上し、受注率が高まります。
文字量の目安(150-200字)を守ることが基本です。1ページに詰め込む文字量が多すぎると、顧客は読む気を失います。理想は1スライド150-200字程度、多くても300字以内に収めます。これ以上の情報が必要な場合は、ページを分割するか、詳細は別紙や口頭説明に回します。商談中に「資料を黙読される時間」が長くなると、対話が途切れて商談の流れが悪くなるため、文字は必要最小限に絞り込みましょう。
余白と視線誘導の設計も重要なテクニックです。スライドの余白率は最低でも30-40%を確保し、情報を詰め込みすぎないようにします。余白があることで、視線が自然と重要な情報に誘導され、メッセージが頭に入りやすくなります。また、人の視線は「左上→右上→左下→右下」のZ字型に動く傾向があるため、最も伝えたいメッセージは左上、補足情報は右下に配置すると効果的です。
タイトルは「サービス概要」のような名詞ではなく、「〇〇を30%削減する仕組み」のようにメッセージ性のある文言にすることで、そのページで何を伝えたいのかが一目で分かります。1ページに複数のテーマを詰め込まず、1つのメッセージに絞ることが、分かりやすい資料の絶対条件です。
グラフ・図解の効果的な使い方
営業資料では、文字だけでなくグラフや図解を効果的に活用することで、理解度と説得力が大きく向上します。視覚情報は文字情報の6倍の速さで処理されるため、積極的に活用しましょう。
数値データの可視化パターンでは、伝えたい内容に応じて最適なグラフを選びます。時系列の変化を見せるなら「折れ線グラフ」、項目間の比較なら「棒グラフ」、構成比なら「円グラフ」、相関関係なら「散布図」が効果的です。重要なのは、グラフに複雑な情報を詰め込みすぎないことです。1つのグラフで伝えるメッセージは1つに絞り、凡例や補足説明は最小限にします。
Before/After比較の図解例は、営業資料で最も効果的な図解パターンです。左側に「現状(Before)」、右側に「導入後(After)」を配置し、中央に矢印で変化を示します。例えば、業務フローの図解で「手作業10ステップ→自動化で3ステップ」のように視覚的に示すと、改善の度合いが一目瞭然です。数値も併記(「作業時間5時間→1時間(80%削減)」)することで、定性と定量の両面から効果を伝えられます。
図解やグラフには必ず「タイトル」と「結論」を添えましょう。「このグラフから何が言えるのか」を文字で明示することで、顧客の理解が深まります。複雑なデータも、適切な図解で可視化すれば、直感的に理解してもらえます。
カラー・フォント選定のポイント
営業資料のデザインにおいて、カラーとフォントの選定は、資料の印象と可読性を大きく左右します。統一感のあるデザインルールを設定しましょう。
業種別の配色戦略では、業種のイメージに合った配色を選びます。IT・テクノロジー系は「青・グレー」で先進性と信頼性を、金融・コンサルは「紺・グレー」で堅実性を、医療・ヘルスケアは「青・緑」で清潔感と安心感を、製造業は「青・赤」で技術力と情熱を表現します。ただし、色数は3色までに抑えることが鉄則です。ベースカラー(背景や余白に使う色)、メインカラー(見出しや強調に使う色)、アクセントカラー(重要ポイントに使う色)の3色を決めて、全体を統一します。
可読性を高めるフォント選びでは、日本語資料なら「メイリオ」または「游ゴシック」が最適です。これらは視認性が高く、プロジェクター投影でも読みやすいフォントです。「明朝体」は印刷物には適していますが、スクリーン表示では可読性が落ちるため、営業資料では避けましょう。フォントサイズは、タイトルが28-32pt、本文が18-22pt、注釈が12-14ptが目安です。本文が小さすぎると読めないため、最低でも18ptは確保します。
また、強調したい箇所は「太字」または「色変え」で目立たせますが、下線や斜体は可読性を下げるため避けます。統一されたカラーとフォントのルールを設定し、すべてのページで一貫して適用することで、プロフェッショナルな印象の資料が完成します。
事前送付 vs 商談中投影のメリット・デメリット
営業資料の使い方は、「事前送付」と「商談中投影」の2つのパターンがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。状況に応じて使い分けることが重要です。
事前送付のメリットは、顧客が事前に内容を把握できるため、商談が深い議論からスタートできることです。顧客が資料を読んだ上で疑問点を整理して商談に臨むため、限られた商談時間を効率的に使えます。また、商談前に決裁者にも共有してもらえる可能性があり、初回商談で決裁者が同席するケースも増えます。
一方、事前送付のデメリットは、資料だけで判断されて商談機会を失うリスクや、競合にも同じタイミングで資料が渡り比較されやすいことです。また、資料を読まずに商談に臨む顧客もいるため、説明が重複する可能性もあります。
商談中投影のメリットは、営業担当者が説明の順序やペースをコントロールできることです。顧客の反応を見ながらページを飛ばしたり詳しく説明したりと、柔軟な対応が可能です。また、口頭説明と資料を連動させることで、理解度と説得力が高まります。
商談中投影のデメリットは、商談後に顧客の手元に残らないと復習できず、社内共有もしにくいことです。
最適な運用は「事前送付(簡易版)+商談中投影(詳細版)+商談後送付(フル版)」の組み合わせです。事前に興味を引き、商談で深く理解してもらい、商談後に社内共有用の完全版を渡すという流れが、最も受注率が高まります。
営業資料と営業トークの連動設計
営業資料は、営業トークと連動して初めて最大の効果を発揮します。資料を見せながら説明するだけでは、資料の朗読になってしまい、顧客の心に響きません。
資料と営業トークを連動させるポイントは、資料には「結論」だけを書き、「理由」「背景」「詳細」は口頭で補足することです。例えば、スライドには「業務時間70%削減」という結論だけを大きく表示し、「なぜ70%も削減できるのか」「具体的にどの業務が削減されるのか」は営業担当者が口頭で説明します。これにより、資料と口頭説明の役割分担が明確になり、顧客は資料を見ながら営業担当者の話に集中できます。
また、顧客の反応に応じてページをスキップする柔軟性も重要です。すべてのページを順番に説明する必要はありません。顧客がすでに理解している内容はスキップし、興味を示したページは深掘りするという柔軟な対応が、商談を活性化させます。そのためにも、各ページは独立して理解できる「1スライド1メッセージ」の構成にしておくことが重要です。
営業トークのシナリオを資料に合わせて作成しておくことも効果的です。各ページで「何を話すか」「どんな質問を投げかけるか」を事前に整理し、営業チーム全体で共有することで、誰が説明しても一定の質を保てます。資料とトークの連動が、営業力の標準化と受注率の底上げにつながります。
商談後の共有・稟議を意識した構成調整
商談が終わった後、資料は顧客の社内で共有され、稟議に回されます。この段階を意識した構成にすることで、受注率が大きく向上します。
商談担当者が社内で説明しやすい構成を意識しましょう。商談に参加した担当者は、社内で上司や決裁者に内容を報告する必要があります。その際、「この資料があれば説明しやすい」と感じてもらえる構成が理想です。具体的には、サマリーページで全体像を把握でき、ROI・導入事例・価格が明確で、FAQで想定される質問に答えられる、という構成です。
決裁者が知りたい情報を網羅することも重要です。決裁者は細かい機能よりも「投資対効果」「リスク」「実績」を重視します。資料に「投資回収期間」「類似企業の成功事例」「導入時のサポート体制」「競合との比較」が明記されていれば、決裁者は判断がしやすくなります。また、「よくある懸念事項とその対策」をFAQで先回りして示すことで、社内での反対意見を封じることができます。
さらに、社内共有用の5ページダイジェスト版を別途用意することも効果的です。決裁者は忙しいため、15ページ全部を読む時間がないことも多いです。「サマリー→効果・ROI→導入事例→価格→導入ステップ」の5ページに凝縮した決裁者向け資料を用意し、「社内共有にはこちらをお使いください」と渡すことで、稟議がスムーズに進みます。
商談の場だけでなく、その後の社内プロセスまで意識した資料設計が、最終的な受注を左右します。
失注分析から改善ポイントを見つける方法
営業資料は一度作って終わりではなく、継続的に改善していくことで受注率を高め続けることができます。そのために最も重要なのが、失注案件の分析です。
どのページで失注したかの可視化では、失注案件ごとに「商談のどの段階で止まったか」「資料のどのページで疑問や懸念が生じたか」を記録します。例えば、「価格提示後に検討が止まった」「導入事例を見てから反応が鈍くなった」「競合と比較されて負けた」など、失注のタイミングと理由を紐づけます。複数の失注案件を分析すると、「価格ページで失注が多い」「ROIの説得力が弱い」などの共通パターンが見えてきます。
商談録画・ヒアリングからの課題抽出も効果的です。オンライン商談の場合は録画して振り返り、「どのページで顧客が困惑したか」「どんな質問が多かったか」を分析します。また、失注後に顧客に率直なフィードバックを依頼することも有益です。「資料で分かりにくかった点はどこですか?」「最終的に他社を選んだ決め手は何ですか?」と聞くことで、改善のヒントが得られます。
これらの分析から、「課題提起が弱い」「ROIの計算が不明確」「導入ステップが具体的でない」といった具体的な改善ポイントが明確になります。感覚ではなくデータに基づいて改善することで、確実に受注率を向上させることができます。
A/Bテストで効果検証すべき3つの要素
営業資料の改善では、A/Bテストの手法を取り入れることで、客観的に効果を検証できます。特に効果が大きい3つの要素をテストしましょう。
サマリーページの訴求軸は、受注率に最も影響する要素です。サマリーページで「課題解決」を前面に出すパターンAと、「導入効果・ROI」を前面に出すパターンBを用意し、どちらが次回商談につながりやすいかを比較します。例えば、10件の商談でパターンAを使い、別の10件でパターンBを使って、次回商談率や受注率を比較します。業種や商材によって刺さる訴求軸は異なるため、自社にとって最適なパターンをデータで見つけましょう。
価格提示の方法もテスト対象です。「年額提示」vs「月額提示」、「価格だけ提示」vs「ROIとセット提示」、「3プラン」vs「2プラン」など、複数のパターンを試します。価格提示の方法次第で、「高い」と感じられるか「妥当」と感じられるかが変わるため、受注率への影響は大きいです。
事例の選定も重要なテスト要素です。「大手企業の事例」vs「類似規模企業の事例」、「定量データ重視」vs「顧客の声重視」など、異なるタイプの事例を試して、どちらが信頼獲得に効果的かを検証します。
A/Bテストは厳密な統計手法でなくても、「複数パターンを試して結果を比較する」だけで十分です。定期的にテストを繰り返すことで、受注率は着実に向上します。
四半期ごとの資料アップデート手順
営業資料は、市場環境や顧客ニーズの変化に合わせて、定期的にアップデートする必要があります。四半期(3ヶ月)ごとの見直しサイクルを確立しましょう。
四半期ごとのアップデート手順は次の通りです。まず、過去3ヶ月の商談データを集計し、受注率・失注理由・よくあった質問をリストアップします。次に、失注分析やA/Bテストの結果をもとに、改善が必要なページを特定します。そして、新しい導入事例、最新の機能追加、価格改定、競合状況の変化などの最新情報を反映します。
具体的な更新項目は以下の通りです。
- 導入事例の追加・更新:最新の成功事例を追加し、古い事例は削除または更新
- 数値データの更新:導入実績数、顧客数、効果実績などを最新化
- FAQの追加:商談で頻出した質問を追加
- 競合比較の見直し:競合の新製品や価格変更に対応
- デザインの微調整:古さを感じさせないよう、トレンドに合わせた調整
また、営業チームからのフィードバック収集も重要です。実際に資料を使っている営業担当者に「どのページが説明しにくいか」「顧客からどんな反応があったか」をヒアリングし、現場の声を反映させます。
四半期ごとの定期更新を習慣化することで、営業資料は常に最新・最適な状態を保ち、受注率の高い水準を維持できます。改善を積み重ねることで、1年後には受注率が2-3倍になることも珍しくありません。
- 何ページが最適か?
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営業資料の最適なページ数は、使用する場面によって異なります。一概に「何ページが正解」というものはありませんが、目安となる基準があります。
初回提案用なら10-12ページが適切です。まだ関係性が浅い初回商談では、情報過多は逆効果です。課題提起・解決コンセプト・サービス概要・主要な効果を簡潔に伝えることに集中し、詳細は次回に回します。
通常の提案用なら15-20ページが標準です。本記事で紹介した15ページの基本構成に、業種や商材に応じて2-5ページを追加する形が最も汎用性が高いです。これ以上長くなると、商談時間内に説明しきれなかったり、顧客が読む負担を感じたりします。
稟議・決裁者向けなら5-7ページに絞り込みます。決裁者は詳細な機能説明よりも、投資対効果・実績・リスク対策を知りたいため、これらに特化した簡潔版が効果的です。
重要なのは、「ページ数」よりも「1ページ1メッセージ」の原則を守ることです。1ページに情報を詰め込みすぎると、20ページでも足りなくなります。逆に、メッセージを絞り込めば、10ページでも十分な情報を伝えられます。まずは15ページの標準構成を作り、商談の反応を見ながら増減を調整するのが実践的なアプローチです。
- パワポ以外のツールは?
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営業資料作成ツールは、パワーポイント以外にも複数の選択肢があります。それぞれの特徴を理解して、自社に最適なツールを選びましょう。
Googleスライドは、クラウドベースで複数人での同時編集が可能なため、チーム制作に適しています。パワーポイントとの互換性もあり、無料で使えることも魅力です。ただし、デザインの自由度はパワーポイントよりやや劣ります。
Canvaは、デザインテンプレートが豊富で、デザインスキルがなくてもプロ並みの資料が作れます。ドラッグ&ドロップの直感的な操作が特徴で、画像やアイコンも豊富に用意されています。ただし、細かいレイアウト調整はパワーポイントの方が柔軟です。
Keynote(Mac)は、デザイン性の高い資料を簡単に作れるApple純正ツールです。アニメーション効果も美しく、プレゼンテーション時の見栄えが良いです。ただし、Windowsユーザーとの共有にはやや手間がかかります。
Preziは、ズームイン・ズームアウトで画面遷移する独特のプレゼンテーションツールで、インパクトのある提案に適しています。ただし、一般的な営業資料には向かず、特別な提案や講演向きです。
結論として、パワーポイントが最も汎用性が高く、営業資料作成に最適です。編集の自由度が高く、ほぼすべてのビジネスパーソンが閲覧でき、印刷やPDF化も容易です。特別な理由がなければ、パワーポイントを選ぶのが無難です。
- デザイナーに依頼すべき?
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営業資料のデザインをプロのデザイナーに依頼すべきかは、予算と目的によって判断が分かれます。メリット・デメリットを理解して決めましょう。
デザイナーに依頼するメリットは、プロフェッショナルな見た目の資料が手に入ることです。デザインの統一感、配色、フォント選定、図解の美しさなど、素人では難しい部分をプロのクオリティで仕上げてもらえます。特に、大手企業への提案や高額商材の営業では、資料のクオリティが信頼性に直結するため、投資する価値があります。
デザイナーに依頼するデメリットは、コスト(5-30万円程度)と時間がかかることです。また、デザイナーはビジュアルの専門家であり、営業戦略の専門家ではないため、「見た目は良いが受注につながらない」資料になるリスクもあります。構成や内容は自社で固めてから、デザインのみ依頼するのが基本です。
デザイナーに依頼すべきケースは、(1)高額商材で受注1件の価値が大きい、(2)大手企業が主なターゲット、(3)社内にデザインスキルのある人材がいない、(4)競合が洗練された資料を使っている、といった場合です。
一方、自社で作成すべきケースは、(1)予算が限られている、(2)頻繁に内容を更新する必要がある、(3)中小企業向けの営業で親しみやすさが重要、といった場合です。
まずは本記事のテンプレートを使って自社で作成し、受注が増えて投資余力ができたらデザイナーに依頼してブラッシュアップする、という段階的なアプローチが現実的です。
- 既存資料のどこから手をつけるべき?
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既存の営業資料を改善したい場合、すべてを一から作り直す必要はありません。効果が大きい部分から優先的に手をつけることで、効率的に受注率を向上できます。
最優先で改善すべき3つのページは、(1)サマリーページ、(2)効果・ROIページ、(3)クロージングページです。この3ページは受注率への影響が最も大きいため、ここを改善するだけでも効果が現れます。
サマリーページは、「会社概要」から始まっているなら、「顧客の課題」から始まる構成に変更します。「今回の提案で何が解決できるのか」「どんな効果が期待できるのか」を1ページにまとめ、決裁者がこのページだけで判断できるレベルの情報密度にします。
効果・ROIページは、「削減効果」や「導入メリット」が抽象的な表現になっているなら、具体的な数値シミュレーションに変更します。「大幅な効率化」ではなく「月間70時間の工数削減=年間420万円のコスト削減」のように、計算式付きで明示します。
クロージングページは、「ご検討ください」で終わっているなら、「次に何をするか」を具体的に明示します。「まずは無料トライアルでお試しください(期限:今月末まで)」のように、行動と期限を明確にします。
この3ページを改善してから、他のページに着手すると効率的です。全体を一度に直そうとせず、インパクトの大きい部分から段階的に改善していきましょう。
- 競合資料の分析方法は?
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競合の営業資料を分析することで、自社資料の改善ポイントが見えてきます。ただし、競合資料を入手することは容易ではないため、現実的な分析方法を紹介します。
競合資料の入手方法としては、(1)顧客から「他社の提案と比較したい」と見せてもらう、(2)自社が顧客側の立場で競合に資料請求する、(3)業界イベントやWebサイトで公開されている資料を収集する、といった方法があります。完全な営業資料は難しくても、競合のWebサイト、ホワイトペーパー、事例集などから、訴求ポイントや見せ方を学ぶことは可能です。
分析すべき5つのポイントは以下の通りです。(1)構成の順序:どの順番で情報を提示しているか、(2)訴求ポイント:何を最大の強みとしているか、(3)事例の見せ方:どんな業種・規模の事例を掲載しているか、(4)価格の提示方法:価格をどう説明し、費用対効果をどう示しているか、(5)デザイン・レイアウト:色使い、図解の種類、文字量などの特徴。
これらを分析する際は、「競合の真似をする」のではなく、「競合との差別化ポイントを明確にする」ことが目的です。競合が強調していないポイントで自社が優れている部分があれば、そこを前面に押し出します。競合が使っている効果的な見せ方があれば、自社資料にも取り入れます。
また、顧客に「なぜ競合を選んだか/選ばなかったか」を聞くことも重要です。受注・失注の両方で、顧客に率直なフィードバックを求めることで、競合資料の強み・弱みが分かり、自社資料の改善につながります。
本記事では、受注率を3倍にする営業資料の構成テンプレートと作成方法を詳しく解説してきました。最後に、受注率を上げるための5つの鉄則をまとめます。
1. 顧客の課題から始める構成 会社紹介から始めるのではなく、顧客の課題提起から始めることで、「これは自分に関係がある」と感じてもらえます。自社が伝えたいことではなく、顧客が知りたいことを優先する構成が、受注率向上の第一歩です。
2. 意思決定プロセスに沿った情報設計 顧客の意思決定プロセスである「課題認識→解決策探索→比較検討→導入決定」の流れに沿って情報を配置することで、顧客がストレスなく読み進められます。15ページの基本構成は、この思考プロセスを完全に反映しています。
3. ROI・効果を数値で明示 BtoB購買で最も重視されるのが投資対効果です。「大幅な効率化」のような抽象的な表現ではなく、「月間70時間削減=年間420万円のコスト削減、投資回収期間3ヶ月」のように具体的な数値シミュレーションを示すことで、決裁者の判断がしやすくなります。
4. 社内稟議を通しやすい資料設計 商談担当者と決裁者が異なる場合がほとんどのため、担当者が社内で説明しやすく、決裁者が判断しやすい情報を網羅することが重要です。サマリー・ROI・導入事例・FAQ・競合比較・導入ステップを充実させることで、稟議通過率が向上します。
5. 継続的な改善とPDCAサイクル 営業資料は一度作って終わりではなく、失注分析・A/Bテスト・四半期ごとの更新を繰り返すことで、受注率を高め続けることができます。現場の声を反映し、データに基づいて改善を積み重ねることが、継続的な成果創出の鍵です。
この5つの鉄則を守り、本記事で紹介した15ページの構成テンプレートを活用すれば、受注率を大きく向上させることができます。ぜひ今日から営業資料の改善に取り組み、営業成果の最大化を実現してください。
本記事で解説した15ページ構成の営業資料テンプレート(パワーポイント形式)と、資料作成時のチェックリスト(PDF)を無料でダウンロードできます。
テンプレートの内容
- 15ページの基本構成(各ページに見出し・レイアウト・記載内容の指示付き)
- 初回提案用10ページ簡易版
- 稟議用5ページダイジェスト版
- 業種別カスタマイズ例(SaaS/コンサル/製造業)
チェックリストの内容
- 資料作成前の確認事項(ターゲット・ゴール・利用シーン)
- ページごとの必須記載項目
- デザイン・レイアウトのチェックポイント
- 商談前の最終確認項目
これらのツールを活用することで、受注率の高い営業資料を短時間で作成できます。貴社の営業活動にぜひお役立てください。

